香月泰男展

2004年11月5日の日記でも宣言していたように、静岡県立美術館へ「香月泰男展」を見に行く。

立花隆さんが著書「シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界」の中で再三述べているように、シベリア・シリーズは印刷物と実物を比べると光の加減やサイズの違いなどで受ける印象が全く異なる。特に香月泰男さんの作品は絵具が厚く塗られていることが多いため、絵画といっても立体的な造形になっていることが多いのである。

絶筆となった「渚(ナホトカ)」は香月さんが亡くなった日にイーゼルに置かれていたという作品。シベリア抑留から解放されて日本に戻る直前の様子を描写している。無数に書かれた人間の姿は無念にもシベリアで亡くなって日本に帰れなかった同僚の魂を連れ帰ろうとする香月さんの意思だそうである。実物で見ていちばん胸を打たれた作品である。「雪」は抑留地で見たという樹木にかかる雪を描写した作品。こちらは柔らかい雪の描写が美しい。シベリア・シリーズは全体的に黒や土色を主体とした陰鬱な色使いの作品が多いので、この作品の白が引き立っている。

シベリア・シリーズ全作以外にも作品は展示されていた。戦地から送られたスケッチ入りの葉書や、台所にあるものを題材としたものなど、こちらは非常にほのぼのとした作風のものが多い。

あとは静岡県立美術館の名物らしいロダンの「地獄の門」を見に行った。前にもどこかで見たことがある気がしていたのだが、上野の国立西洋美術館にあるらしい。パリのオルセー美術館にもあるらしいのだがこちらは気が付かなかった。2階にあるロダン館の入り口を入ると、正面にこの「地獄の門」を見下ろすような配置になっている。浜松市のこじんまりとした美術館と比べると空間を贅沢に使っていてうらやましい。

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