楽器の中の聖と俗

浜松市楽器博物館で開催された講座「シリーズ:楽器の中の聖と俗」を聞きに行く。すでに何年も行われている講座なのであるが、昨年受講した妻の勧めで今年行われる3回分を申し込んだ。講師の西岡信雄さん(大阪音楽大学)のお話がなかなか面白いらしい。

今回のテーマは「南太平洋のコーラス」。東はタヒチ島、西はパプア・ニューギニアやオーストラリアのアボリジニあたりまでに伝わるコーラスが音声やビデオで紹介された。

大きな特徴は二つ。まずは打楽器以外の楽器はほとんど使われない。せいぜい使われても竹で作った笛(瓶笛というかパンフルートがでかくなったやつというか)くらいである。ニュージーランドのラグビーチームで有名になったボディドラミングや、木の切れ端を地面に打ちつけることによってビートを得る。もう一つは、そういった基本的には音程を持たない伴奏形態であるにも関わらず、コーラスはちゃんとハモっているのである。これは西洋音楽が伝わる前から独自に形成されていったものなのだそうだ。フレーズの最後はちゃんとした長三和音で収束しているものの、その途中は西洋音楽の純正率や平均率に当てはまらない独自の音程感があるようだ。(今の我々の耳からするとかなり気持ち悪い)

西岡先生の語り口も「関西のおっちゃん風ツッコミ」がなかなか面白い。学術的なことをわかりやすく説明するのと同時に、各地の文化の裏側にある「フィールドワークしなければわからないようなこと」もさりげなく笑いを取りながら紹介している。

(今回の講義ではないのだが、北島三郎さんの《兄弟仁義》でハバネラのリズムが使われているという話を聞いたときに、私は目からうろこが落ちた(笑)。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください