「アフター・ダーク」読了

村上春樹さんの 「アフター・ダーク」 読了。

アフターダーク

描写されている世界観は「ねじまき鳥クロニクル」や「少年カフカ」あたりから顕著になっている「向こう側」と「こちら側」の話。とはいえ、この作品 はまた意図的に作風を変えた作品。完全に三人称で物語が語られている。その「向こう側」と「こちら側」の世界観が上記2作ではかなり具体的なイメージを 持って構築されていたのに対して、この作品では少し純化あるいは抽象化された形で提示されている。この作品を読んで、そういう世界観は実はすでに初期三部 作の完結編である「羊をめぐる冒険」あたりから語られているものであることに気がついた。そういう意味では、あるところまで進んでいった村上作品が、また 向きを変えて少し以前の作品に近づいた(もちろん、それは退行ではない)と思える。

作品としては含みを持たせたエンディング。解決されていないエピソードもあるが、それはあえて放り出しているのだろう。長さ的にも長編というには少しコンパクトであるし、この先にまた大きな作品が控えていそうで楽しみである。

村上春樹さんのお気に入りであるジャズがかかるバー(もちろんCDではなくLPをかけることが重要)や猫の集まる公園が登場するところも、少し今までの小説とは毛色が違うのかな。

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